2019年4月4日 更新

フランスは黒人の割合が多い?差別の歴史とサッカーフランス代表の実情

2018年のサッカーワールドカップで優勝したフランス代表に黒人選手が多かったことが話題を集めました。確かにフランスは移民国家という印象が強いですが、実際に黒人の割合が多いのでしょうか?今回はフランスにおける黒人を含む移民の実態や差別の歴史について解説します。

目次

フランスには黒人が多い?

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日本も活躍した2018年のFIFAワールドカップでフランスが20年ぶり2回目の優勝を果たし、大きな話題となりました。フランス中が歓喜に包まれましたが、一方でフランス代表の選手に黒人が多かったことに驚きや疑問の声を挙げる人もいました。

アメリカの著名なコメディアン、トレバー・ノアは、フランス代表に黒人選手が多いことに注目し、ジョークでフランスの優勝を「アフリカの勝利」と呼びました。このノアの発言に駐米フランス大使が反発し、抗議声明を出したことで国際問題に発展しました。
Eiffel Tower Paris France - Free photo on Pixabay (145127)

フランス大使の抗議にノアも反論し、アメリカやフランスはもちろん、世界中で話題になりました。この一件はフランスが移民国家であるという事実を象徴すると共に、移民に対する差別などの問題を抱えていることを世界中に知らしめました。

今回は、移民国家であるフランスの実態や歴史、根強く残る黒人を含む移民に対する差別について解説します。

フランスにおける移民の割合

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フランスは移民国家であるとよく言われますが、実際はどうなのでしょうか?フランスにおける移民や差別の実態を知るために、まずフランスにおける移民の割合を見てみましょう。

全人口の19%

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フランスの全人口における移民の割合は、およそ19%です(2010年のデータ)。このデータにおける移民とは、外国生まれの移民と移民二世のことです。移民の割合は世界的に見て決して高い数値ではありません。

とはいえ、移民の総数は1180万人であり、決して少ないわけではありません。後ほど詳しく解説しますが、現在のフランスは移民を制限する政策を取っています。しかし、フランスは多くの先進国と同じく、深刻な少子高齢化に悩まされています。

少子高齢化がこれ以上進むようだと、移民を受け入れざるを得ず、移民の割合がさらに増える可能性もあります。フランスに限らず、少子高齢化はさまざまな国で問題になっています。移民の受け入れは国を維持するためでもあるのです。

アフリカ系移民・・・42.9%

Couple African Happy - Free photo on Pixabay (145137)

フランスの移民の中で最も多いのは、アフリカ系移民です。移民人口に占めるアフリカ系移民の割合は42.9%なので、およそ500万人のアフリカ系移民がフランス国内で暮らしていることになります。

具体的にはアルジェリアやカメルーン、コートジボワール、モロッコなどが出身国の移民が多く、主にフランスの旧植民地から多くの移民が流入している実態があります。

経済が活発だった頃は、スペインやポルトガルなどの非アフリカ系の移民も受け入れていましたが、割合はそれほど高くありません。

アルジェリア移民・・・13.4%

Algeria Tassili N'Ajjer Sahara - Free photo on Pixabay (145139)

アフリカ系移民の中でも特に多いのが、13.4%を占めるアルジェリア系移民です。アルジェリアはフランスの旧植民地であり、地理的・歴史的にフランスとの結び付きが非常に強い国です。

アルジェリア系に次いで多いのはモロッコ系ですが、モロッコはアルジェリアの隣国であり、やはりフランスと地理的・歴史的な結び付きがあります。

有名なアルジェリア系フランス人に、元サッカーフランス代表で日本でも有名なジネディーヌ・ジダンがいます。また「異邦人」などの小説で知られるノーベル賞作家、アルベール・カミュはフランス領時代のアルジェリアで生まれており、「異邦人」の舞台はアルジェリアです。

なぜ黒人が多い?フランスの歴史

Paris Eiffel Tower France - Free photo on Pixabay (145140)

フランスに黒人を始めとした移民が多いことは分かりましたが、なぜここまで移民が増えたのでしょうか?その理由を知るためには、まずフランスの近代の歴史の流れを詳しく理解する必要があります。

以下でフランスの移民の歴史を見ていきましょう。

移民の定義

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フランスにおける移民の正確な定義は「外国で生まれたこと」と「出生時にフランスの国籍を持っていなかったこと」の2点です。しかし、正式な滞在許可を持たずに暮らしている人も多く、フランスの移民の実数を正確に把握することは困難です。

移民は、しばしば難民と混同されてしまいますが、正確には別の概念です。難民とは、主に政治的・宗教的理由で出身国を離れざるを得なくなった人のことですが、移民とは、理由にかかわらず単純に定住する国を変えた人のことです。

19世紀後半からフランス内での出生率が低下

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フランスの移民政策の歴史を見てみましょう。現在につながるフランスの移民の受け入れが始まったのは、19世紀後半です。19世紀後半のフランスは、ベルエポックと呼ばれる経済的・文化的に豊かな時代でしたが、一方で出生率の低下という問題に直面していました。

出生率の低下は先進国に共通する問題であり、フランスも例外ではありませんでした。深刻な人口減少の対策として、主に労働力を確保するために移民を受け入れ始めました。主にフランスの植民地からの受け入れが多かったことが、現在のフランスの移民構成に表れています。

経済成長に伴い労働力の補填を行った

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第二次世界大戦時にナチスドイツに占領されて国家の危機に陥っていたフランスですが、1944年に開放され、終戦後はかつての活気を取り戻しました。

経済成長による労働力の確保を目的に再び移民を受け入れるようになり、アフリカ系はもちろん、スペインやポルトガルの移民も受け入れ、経済成長を支えました。フランスが積極的に移民を受け入れていたのは、この頃です。

一方で増え続ける移民とフランス国民との軋轢などの問題が顕在化しており、後の移民受け入れ停止につながっていきます。

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