2019年10月2日 更新

つくば母子殺人事件とは?事件発生の経緯や犯人についても

1994年、母親と2人の子供が殺害され遺体が遺棄されるという凄惨な事件が起きました。犯人は誰だったのか、目的は何だったのか、単独犯なのか複数犯なのか、残された俵結びの謎とは…。当時の報道の問題点も含めて解説していきます。

目次

8人は大げさだとしても、複数の愛人を持っていた野本は当然妻・映子さんはそのことを把握していたに違いありません。ただでさえ医師という仕事は多忙な上に、愛人に会っている間は自宅に帰ってこないわけですから、家族の時間というものはほぼ皆無だったことでしょう。

むしろ野本は愛人の存在を隠すことはしませんでした。堂々と浮気をして、そのことを映子さんに認識させることで、公認の状況を作っていたのかもしれません。

犯人・野本岩男に下された判決

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家庭を持ちながら自分一人だけの欲求を満たすためだけに生活をし、妻子を不幸にしたばかりか最終的に妻も2人の子供も殺害し、更にその遺体を尊厳もなにもなく遺棄した野本岩男は、隠ぺいの甲斐なくその罪を白日の下に曝され逮捕されました。

そんな身勝手な男の裁判が、事件の翌年1995年から横浜地裁で始まりました。マスコミの大々的な過熱報道により日本中の注目を集めたこの裁判は、どのような判決が下されたのでしょうか。

検察側は死刑を求刑

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3人を殺害した野本に対し検察側は、「倫理概念がなく不倫を常態化し、身勝手に妻子3人を殺した上、慈悲もなく海中に捨て、純粋無垢な子供たちを手に掛けた行為は血も涙もなく、極刑をもって臨む以外ない」として、死刑を求刑しました。

計画性がなく衝動的な行動だったとしても複数の人間を殺害し、更に死体を遺棄したということで「殺人罪」「死体遺棄罪」の罪状で死刑を求刑されることは世間もおそらく予想していたことでしょう。

最終的に「無期懲役」の判決が下される

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1996年2月22日、この事件の判決公判が横浜地裁で行われました。マスコミも世間も、おそらく求刑された死刑で判決が下されるものと予想していた人が多かったことでしょう。

しかし裁判を取り仕切った松浦繁裁判長は「医師という社会的な地位にありながら、自分の妻と子を殺害し遺棄し、その後偽装工作するなど極めて残忍な犯罪である。しかし、犯行は衝動的で殺害方法は残忍とはいえず、また犯罪を繰り返すような強い反社会性がない上、本人も深く反省している」として、野本岩男に対し無期懲役の判決を言い渡しました。

現在も服役中

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無期懲役の判決に検察側は量刑が軽すぎると控訴しました。一方弁護側は、逆に量刑が重すぎると控訴します。1997年1月31日、東京高裁は双方の控訴を棄却しました。野本側は一旦上告したものの、その後訴えを取り下げ、無期懲役で刑が確定しています。

事件から25年、判決から22年経過した2019年現在、当時29歳だった野本は51歳になっています。無期懲役の場合、模範囚だとすれば仮釈放の可能性もありますがそれは30年以上服役した後の話ですので、現在も間違いなく服役中です

つくば母子殺人事件のその後

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裁判の末、刑が確定した野本はその刑に服すことになりました。殺害された3人も野本が罪を償うことで報われ、事件はすべてが一段落したといえる状態になります。

しかし「つくば母子殺人事件」はこれだけでは終わりませんでした。この1990年代はマスコミによる過熱報道が問題視されていた時代です。被害者のプライベートまでもが日本中に曝され、今でいうコンプライアンス違反が横行していました。この事件も例にもれず、行き過ぎた報道が行われていたのです。

被害者妻を「悪女」と囃し立てるマスコミ

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妻・映子さんが野本の借金返済のためにランジェリーパブで働いていたことが過剰にクローズアップされた報道が乱発され、「子供がいるのに」「夜家を空けて」「母親なのに風俗まがいの仕事を」などと事実を誤認するような伝えられ方をしていました。

これではいかにも「殺害されたのはかわいそうだけれど、自業自得の部分はある」と言わんばかりの報道で、当時違和感を感じていた人もいたかもしれません。家庭を守るために働き、身勝手な夫に殺害された上に、尊厳を冒されるような報道をされてはたまったものではありません。

多くの減刑嘆願書が届けられる

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野本の裁判の際には、多くの嘆願書が届いていたという話があります。その数は3000通とも言われ、そのほとんどが野本の減軽を求めるものでした。

大学時代の友人からは「温厚で明るい性格だった」、勤務医時代の患者や上司からは「熱心で親切医師であった」という内容で、野本がいかに世間の中でうまく立ち振る舞っていたかがわかる内容だったようです。

「いい人だから」といって犯した罪の重さは変わりません。しかしこの多くの嘆願書が裁判にどのように影響したのかは不明です。

犯人・野本岩男の自供内容

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当初は自分が殺害したにもかかわらず捜索願を提出し、妻子の安否を心配する夫を演じていた野本でしたが、警察からNシステムで動かぬ証拠を突きつけられて殺害までの経緯を自供しています。

殺害のきっかけになったと思われる夫婦喧嘩は密室で行われたもので、その真相は殺害された妻・映子さんと加害者である野本しか知り得ない内容です。妻・映子さんが亡くなって証言することができない状態で、野本はどのような自供をしたのでしょうか。

離婚を切り出された

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10月29日、この殺人事件が起こった日に野本と妻・映子さんは口論となりました。原因は野本の女性問題や金銭問題で、映子さんから離婚を切り出されたと野本は語っています。

恐らくこれは初めての離婚話ではなく、何度も繰り返し行われてきた話し合いだったようです。しかしその話し合いは冷静に行なわれているものではなく、感情的な激しい口論だったのでしょう。

野本の供述では、映子さんは愛人の存在を勤務先の院長に暴露すると仄めかしたということでした。

慰謝料・借金返済を要求された

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