2019年8月11日 更新

アウティングとは何か?アウティングの問題点や加害者の心理とは?

「一橋大学アウティング事件」の裁判が2019年2月に結審されました。アウティングとは何か、カミングアウトとどう違うのか、アウティングにおける加害者の心理とはどのようなものなのか、アウティングの問題点を含めて解説していきます。

目次

当事者の信頼を裏切り傷つける

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異性愛以外の性的指向の人間が、友人や家族に自分の性的指向をカッミングアウトするのはとても勇気がいることです。カミングアウトしても差別されない、他人に秘密を洩らさないと思っているからこそ打ち明けるという人が大半でしょう。

大きな信頼を寄せているからこそできるのがカミングアウトです。アウティングはその信頼を裏切る行為といったも過言ではありません。

人生を変えてしまうかもしれないほどの大きな秘密を告白した相手に秘密を暴露されたら、傷つかない人はいません。

当事者が精神的に追い詰められる

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自分の一番大きな秘密を信頼していた人物に暴露され、好奇の目にさらされたとしたら、普通の精神状態でいられるわけがありません。

実際にアウティングされた相手に何かをされたり差別的な発言をされなかったとしても、自分の知らないところでどこまで話が広まっているのか、どのように噂されているのか不安になることでしょう。

また理解しているような発言をされても、そもそも性的指向はデリケートな問題で、自分の意思でカミングアウトしたわけでもない相手に土足で踏み込まれて我慢できるような類のものではありません。

時間の経過とともに当事者は精神的に追い込まれて行ってしまうのです。

アウティング加害者の心理

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アウティングの被害者は、心理的に追い詰められ日常生活を正常に営めなくなることは容易に想像が付きます。自分の最もプライベートな部分を強制的に世間にさらされるわけですから、当然の反応です。

アウティングの問題点を考えると、アウティングすることのメリットはほぼないと感じる人が多いでしょう。ではなぜアウティングが起きてしまうのか、アウティングの加害者はどのような心理なのでしょうか。

ここからは加害者側からみたアウティングを考えていきます。

漏らす内容がさほど重要だと思っていない

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まずアウティングをする人の一つ目の心理として「漏らす内容がさほど重要だと思っていない」というものがあります。自分にカミングアウトしてくれた人物が、どれだけの勇気をもって告白をしたか、それまで性的指向についてどれだけ悩んだのかを想像することなく、世間話、ネタ程度に考えているのです。

そのため周囲の人々に簡単にアウティングしてしまいます。笑い話にすることもあるでしょう。

中には、性的指向について簡単に周りの人に漏らしてしまう加害者を「信用できない人間」として見る人もいるかもしれません。

被害者に与える打撃が想像できない

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アウティングが被害者にどの位の打撃を与えるのか想像できないというのも、アウティングの加害者のよくある心理です。一橋大学アウティング事件の加害者も、そこまでショックを受けると思わなかった、こんなことになると思わなかったというのが正直なところでしょう。

マイノリティの人は性的指向に関して長期間悩んでいることが多く、それをなんとか自分の中で消化し、努力をしながら人間関係を築き、日常生活を送っている人は少なくありません。そこを理解できない人が、アウティングをしてしまうのです。

自分だけでは抱えきれない問題だと感じている

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漏らす内容がさほど重要だと思っていない人とは逆に、重大なことを聞いたという自覚がある場合もアウティングをする危険があります。

人間は自分のキャパシティを超える出来事があると、自分一人で問題を抱えることに限界を感じます。信頼できる人間に一緒に抱えてもうらうことで解決しようとするかもしれません。

カミングアウトされたことがキャパシティを超える出来事だったとすると友人や家族に相談するという形でアウティングが起こってしまうのです。

被害者との人間関係に悩んでいる

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相手との元々の関係性にもよりますが、カミングアウトされたことによりその関係性が変化することはままあることです。一橋大学アウティング事件の被害者と加害者も、元々は仲のいい友人関係でしたが「恋愛感情の告白」と「カミングアウト」を同時に行ったことにより、人間関係が変化しています。

人間関係の変化により、どう振る舞っていいのかがわからない、まわりの友人に変に思われるかもしれないと悩むこともでてきます。そのような心理状態になると、アウティングすることによってその悩みを解決しようとするのです。

性的マイノリティはカミングアウトを望んでいる?

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現在LGBTという言葉は一般的に広く知られ、芸能人や政治家を始め一般の人でもカミングアウトしている人が少しずつ増えてきています。LGBTの権利を保護しようと活動するLGBT活動家も目立ってきました。

一部の地域で「パートナーシップ条例」ができるなど世間の受け入れ態勢やが以前よりも整ってきて、世界的にも法の整備が進んできているのは確かです。そんな現代において、性的マイノリティの人々は、カミングアウトを望んでいるのでしょうか。

LGBT活動家にはカミングアウトできる世の中を理想とする人も

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LGBTの活動家の中にはすべての性的マイノリティがカミングアウトできる世の中を理想として掲げている人もいます。どんな性的指向であっても好奇の目にさらされることなく、差別されることなくごく普通の生活と権利を手に入れられるとしたら、確かにそれは素晴らしいことでしょう。

1988年より10月11日はカミングアウトデーとされ、自分の性的指向や性自認をカミングアウトした人をお祝いする祝典が、世界中のLGBTコミュニティで毎年行われています。

カミングアウトを望まない性的マイノリティも多い

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LGBTの活動家の台頭で、世間はLGBTに対して徐々に理解を深めてきています。しかし間違ってはいけないのは、「すべての性的マイノリティの人がカミングアウトを望んでいる」という認識です。

LGBTの活動家がカミングアウトしているのはLGBTの権利を獲得し、差別をなくすためにしていることです。また自分を多くの人に理解してほしいという気持ちもあるでしょう。

しかし、自分のプライバシーを守りたい、多くの人に理解してほしいわけではなく自分のパートナーさえ理解してくれていればいいという性的マイノリティもいます。

異性愛者の中でも内向的な人、社交的な人がいるように性的マイノリティであっても、すべての人が同じ考え方というわけではありません。

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