2019年3月4日 更新

やんごとなきの意味と類語は?やんごとなきの正しい使い方と例文

今回は日本の古語から美しい雅ことばの「やんごとなき」を取り上げて、その意味や語源を説明したうえで使い方や類語を例文といっしょに紹介します。古語は日本の伝統的な文化の1つです。敬遠することなく正しい使い方を覚えて会話を楽しみましょう。

「やんごとなき」は貴重な雅ことば

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優雅で美しい響きをもつ「やんごとなき」ということばは、古くから日本で使われてきた雅ことばのひとつです。平安時代の書物、「枕草子」、「源氏物語」、「今昔物語」、「蜻蛉日記」などにも登場していることばで、みなさん、高校時代の古文の授業で習ったことがあるのではないでしょうか。

現代では、日常生活でほとんど使うことのないことばになってしまいましたが、だからこそ、あなたの会話を光らせる貴重なことばだといえます。最近、やまとことばの美しさが見直されはじめています。こういった古いみやびことばを知っておくと、いろいろな話題を提供することにもなって、会話の内容も格調高いものになるのではないでしょうか。

今回は、意味や使い方や類義語などを紹介しながらこの日本古来の美しい雅ことば、「やんごとなき」について説明していきます。

やんごとなきの意味

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それではまず、「やんごとなき」の意味から説明していきましょう。

やんごとなきの意味

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「やんごとなき」は「止んごとなき」と書き表されます。つまり、「止めることができない」という古語ですが、これは「放っておけない」、「大切な」、「やむを得ない」、「とても重要な」、「優れた」、「貴重な」、「並みではない」といった意味でいろいろな書物の中で使われています。

たとえば、蜻蛉日記では「やんごとなきことありとて出でむとするにや(とても重要な用事があって出かけようとすると)」のように「放っておけない、重要な」といった意味で使われていますし、枕草子の中では「身にやむごとなく思ふ人のなやむを聞きて(自分にとってとても大切な人が病気になったと聞いて)」のように「大切な、貴重な、尊ぶべき、重要な」のような意味で使われています。

また源氏物語では「 いとやむごと なき際にはあらぬが(大変身分が高い人というのではないが)」のように「身分の高い」という意味で、今昔物語では「諸の止事無き験し有る僧共を召して(諸国の優秀で経験豊かな僧侶を集めて)」のように「最高の、優れた」といったような意味で使われています。
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そういった意味が転じて、この「やんごとなき」は、大きく分けて、「放っておけないほどに重要な」と「高貴な」という2つの意味で使われることばとなりました。

やんごとなきの使い方

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では、次に、「やんごとなき」ということばの使い方について説明します。上述したように、「やんごとなき」には、大きく分けて2つの意味があります。「放っておけないほど重要な」という意味と、「高貴な」という意味です。したがって、使い方にも2通りがあります。

1つは、「とても重要(重大)な理由や事情」を表す使い方です。この場合は、「やんごとなき事情があって中止せざるを得なくなりました」のような使い方をします。

もう1つは「高貴な」身分や家柄を表す使い方です。この場合は、「やんごとなき家の出身」とか「やんごとなきお人」などのような使い方をします。

以下に「やんごとなき」を使った例文をあげてくわしく解説していきます。

「やんごとなき」を使った例文

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ここでは、「やんごとなき」ということばを使った例文を3つ紹介します。

1番目の例文「やんごとなき理由があって結婚式は欠席させていただきます。」:この「結婚式」は会議などに言い換えることができます。また「やんごとなき事情のため旅行を取りやめました」などといういい方もします。この場合の「やんごとなき」はいずれも「非常に重大」という意味を表します。

2番目の例文「やんごとなきお方がおいでになりました。」:この場合の「やんごとなき」は高貴な身分を表していて、「とても身分の高い」といった意味になります。

3番目の例文「あの方はやんごとなきお生まれでございます。」:この場合の「やんごとなき」は、高貴な家柄や血筋を表しています。「とてもよい家柄の」とか「とてもよい血筋の」といった意味になります。

やんごとなきの類義語を紹介

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古語である「やんごとなき」には、同じ古語の類義語があります。「あてなり」ということばです。この「あてなり」は漢字で「貴なり」と書くように、「高貴な、身分の高い、上品な」といった意味で、「やんごとなき」と同じ意味を表します。

「ひとりはいやしき男の貧しき、ひとりはあてなる男もたりけり(ひとりは貧しい男を、ひとりは身分の高い男を夫にしていた)」(出典:伊勢物語)とか、「世界の男、あてなるもいやしきも、いかでこのかぐや姫を、得てしがな…(世の男たち、身分の高いものも低いものも、何とかしてこのかぐや姫を手に入れたいものだ…)」(出典:竹取物語)などのように使われています。

ただ、どちらがより高貴で身分が高いか、というと、「やんごとなき」の方だと解釈されています。
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現代語として日常の中でよく使われることばにも、「やんごとなき」と同じような意味を表すことばがあります。以下では、そういった「やんごとなき」の類義語をいくつか紹介します。

先に「高貴な」といった意味における類義語を紹介し、その後で「放っておけない、とても重大な」といった意味における類義語を紹介します。

身分が高い

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「士農工商」の身分制度があった江戸時代などでは武士、それも上級武士やお殿様などが「身分の高い」人でした。明治時代になると、皇族や華族などが「身分の高い」人といわれていました。現代においてはそういった身分制度や階級制度はなく「身分の高い」ということばは、名門の出の人や地位が高い人のことを意味するようになっています。

「家柄のいい」、「名家の」、「良家の」、「血筋のよい」などで言い換えることができます。

品格がある

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「品格がある」というのは、風格や品位が感じられる、という意味のことばです。これは、身分や財力などにはかかわらず、その人や物の本質にかかわってくることばです。

人に対して使われる場合は、「気品のある」、「気高い」、「高潔な」などのことばで言い換えることができます。物や芸術作品に対して使われる場合は、「優雅な」、「高雅な」、「格調高い」などのことばで言い換えることができます。血筋や身分を表すときに使われることもありますが、その場合は、「高貴な」、「由緒正しい」などのことばで言い換えることができます。

由緒正しい

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