2019年6月17日 更新

ホモフォビアの意味と原因とは?同性愛の歴史と日本で起きた事件

性について寛容と言われる日本でも多く存在する『ホモフォビア』という思想をご存じでしょうか。同性愛などの性的思考と関係が深いその言葉が生まれた歴史的背景や、原因について、また世界での捉え方も同時に触れて、性的志向への議論に関しても考えて行きます。

一橋アウティング事件

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この事件は2015年発生で記憶にも新しいと思いますが、この事件は、現代社会における『ホモフォビア』の問題を極めて象徴する事件だといえるでしょう。

2015年4月、一橋大学法科大学院の男子学生Aが同級の男子学生Bに対し、LINEを介して交際を求めるメッセージを送りBへの恋愛感情を告白。その後BはAに対し、「付き合うことはできないが、これからも良い友達でいたい」と応答した。

その後さらに、友人達が見ているグループLINE上で「お前がゲイであることを隠しておくのムリだ。ごめん(Aの実名)」と投稿し、Aが同性愛者であることを第三者に、本人の許可なく暴露しました。このグループLINEには、同級生10名ほどが参加していました。
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相手の許可なくセクシュアリティを第三者に伝えることは「アウティング」と呼ばれる行為で、決して行ってはいけません。後の調査で、BグループLINEでのアウティング以前にも、3人の同級生にAが同性愛者であることを暴露していた、とも述べています。

その後Aは授業でBと同席すると、パニック発作を起こすなど、心身に変調をきたし、心療内科を受診し不安神経症と診断。この間、Aは法科大学院の教授や、大学のハラスメント相談室に相談をしたものの、大学はAの状態を把握していたうえで、特に対策を講じませんでした。

そして授業中にAはパニック発作を起こし、大学の保健センターで投薬などの処置を受けた後に、大学構内の6階ベランダから転落。のちに死亡が確認され、投身自殺を図ったものとされました。
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その後、亡くなったAの家族は民事訴訟を起こし、2016年8月5日に東京地裁で第1回の口頭弁論が実施。8月20日に一橋大学の校門前で大学関係者や性的少数者/LGBTらによる追悼集会が開催されました。

裁判の中でBは、交際を断ったにもかかわらず、Aが「普通の友人以上」に連絡などをしてくることが「全く理解できず、大変困惑し、精神的に不安定になり夜眠れなくなっていった」として精神的に追い詰められ回避するには暴露しか手段がなかったと主張し、大学は対応は適切だったと主張しました。

その後、遺族とBの間で和解が成立したことが公にされました。具体的な内容は、口外禁止条項により明らかにされていません。また、一橋大学との裁判は継続されています。

セクシュアリティが、どれほど人のアイデンティティと密接にかかわっているか、そしてアウティングがという行為が、どれほど当事者の心を傷つけるかが、人々に知れ渡った事件ともいえるでしょう。


各国の同性愛への対応について

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『同性愛』には太古からの歴史があり、結果各国で様々な変遷を積み重ねてきました。
同性愛や性的マイノリティには寛容と言われる日本でも、殺人事件が起きたり、差別感情から発生する多くの問題が認識されています。悲しい事ですが、それも現実と言えるでしょう。

では、日本以外の外国では、同性愛をどのようにとらえているのでしょうか。
現代の文明が発達した社会でも、国によって様々な認識で対応されている現状について、ここからは確認します。

中国

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中国において、同性愛は違法ではありません。中国は1997年、香港は1991年、マカオは1996年より、同性間の性交渉が「非犯罪化」となりました。中国には同性愛者が4000万人おり、その内3000万人が男性だと見積もられています。
国土が広い中国は、地域によってその考え方にも差があると言われています。


非犯罪化されてはいますが、同性結婚や同性間のリレーションシップ、同性カップルの養子縁組は法的に承認されておらず、性的指向や性自認に基づく差別を禁止する法律も存在していません。

10年近く前は、テレビ番組や映画における同性間のリレーションシップ表現は検閲が行われ、同性愛映画も公式上映は容認されていないのが実情でした。国営の一般メディアで同性愛は未だ非公然のものとされています。

ガンビア・イスラム共和国

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ガンビア・イスラム共和国は、西アフリカ西岸に位置する共和制国家。
この国を22年の長きに渡り統治していた、ヤヒヤ・ジャメ大統領は同性愛に対する「弾圧」ともとれる、
強固な政策を行っていました。

2008年5月同性愛を禁止する法律を制定しました。ジャメは国内の同性愛者に対し、「国外退去か、頭を切り落とされるか」を選ぶように通告し、「イランよりも厳しい弾圧」と批判を浴びました。

2013年9月には国連総会の演説で、「同性愛はアッラーと人間に対する冒涜」と発言。また、2014年2月には同性愛者を「害虫」と呼び、「マラリアの原因となる蚊と同じ方法で同性愛者と戦う」と発言しています。

タンザニア

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東アフリカに位置する共和制国家であるタンザニアは、スワヒリ語を国語としたアフリカ在来の文化が大きな役割を果たしている数少ない国家です。

2018年10月、タンザニア政府は、同性愛・両性愛・トランスジェンダー・インターセックスなどの人々を摘発する専門チームを立ち上げ、こういった志向の人々の特定と拘束を開始すると発表しました。性的マイノリティに対する否定的な考え方がとても強い事が伺えられます。

タンザニアでは、同性愛行為をする者に刑事罰を与え、特に男性同士の性行為には最長で終身刑となります。2017年9月には、NGO主催の同性愛に関するワークショップに参加していた男女20人が地元警察に逮捕されています。

「同性愛はわれわれの文化ではなく、けっして合法化はしない。反LGBT法を維持するためには、海外援助を失うことさえ喜んで受け入れる!」と外務大臣が世界に向けて声明を出すほどの『反LGBT』が強い国家です。

サウジアラビア

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サウジアラビアは絶対君主国家。現在において厳しい死刑制度を維持している国と言われ、人口当たりの死刑執行数は世界最多です。

建前上死刑が適用される罪の中に同性愛が含まれており、重罪としていますが、実運用においては罰金刑や鞭打ち刑が科されることが多く、実際に死刑まで行くことは稀とも言われています。

また、2017年に同性愛を犯罪とするサウジアラビアで、『ゲイ大好き(I Love Gays)』のハッシュタグがトレンドにあがるなど、少しづつですが今までとは異なった 声も上がっています。

北朝鮮

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北朝鮮も性的マイノリティは存在しますが、可視化された同性愛者の事実や社会活動はなく、刑法にて同性愛や異性装に関連した項目もありません。ですが、性自認について一般国民の感情は非常に保守的で、政府は男性の同性愛について、「資本主義の外国人の退廃性の象徴」だとする立場を取っています。

はっきりとした法律や、弾圧などの記録は確認されていませんが、本来、社会調和やモラルを重んじる国家ゆえ、完全肯定とはいかない部分が想像されます。

また、北朝鮮の憲法では「いかなる場所においても市民は平等である」と定めていますが、性的指向や性自認を理由とした差別防止については明記されていません。また婚姻や家族に関する保護は明記されていますが、同性結婚ついても明記されていません。

ホモフォビアの原因

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長い歴史の中、国内外で『同性愛』という性的思考がどのように受け入れられ、また拒否されてきたのか。現代社会ではどのような位置付けで認識されているのかなどについて見てきました。

様々な人間が介在する社会の中で性的志向に対する賛否は当然存在しますが、『ホモフォビア』という強い拒否感情は一体何故人の心に強く持たれるのでしょうか。その思想が生まれる背景はどこにあるのか、いくつかの側面から考えられる点を取り上げます。

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