刹那主義の意味とは？刹那主義者の生き方や特徴と快楽主義との違い

快楽主義とは

かいらくしゅぎ【快楽主義 hedonism】
快楽(ギリシア語hēdonē)こそ善の最終的な判断の基準であると考える倫理的立場。一般には肉体的快楽，とくに性的快楽を追求する立場をいうが，哲学史的には，何を快楽とするかは，各体系によって異なる。ソクラテスの弟子アリスティッポスは，人生の目的を快楽の追求とした。ただしこの快楽とは肉体的放縦の所産ではなく，逆に魂による肉体的欲望の統御から生まれると考えた。この態度は次代のエピクロス学派に続く。エピクロスとその学派は魂の平静(アタラクシアataraxia)を重んじ，健康で質素な共同生活を通して得られる精神的快楽を重んじた。
（出典　株式会社平凡社世界大百科事典第２版より）
via 快楽主義(かいらくしゅぎ)とは - コトバンク

この解説の中に登場する「エピクロス」と「エピクロス派」は、古代における快楽主義者の第一人者ですが、彼らの唱えた快楽主義は、肉体の快楽ではなく、哲学的な思考で快楽を求めること、つまり体の健康と平静なる心を保つことこそが真なる快楽に通じるのであり、その真なる快楽を求めることが善だ、という思想だったのです。

これに対して、現在では、快楽主義と聞くと、セックスやギャンブルやグルメなど自分の欲望を満たすことをよしとする考え方をイメージしてしまいます。これは、「快楽」という言葉と、「快楽にふける」という意味の「享楽」という言葉が混同してしまったからだと思われます。

快楽主義の本質や由来はともかくも、今わたしたちがイメージする「快楽主義」は、明らかにマイナスの意味が含まれているというのが現実です。

刹那主義と快楽主義の違い

via pixabay.com

刹那主義は、今この時の一瞬一瞬を大切に生きる、という考え方です。自分の求めているもの、自分の目指しているものを明確にとらえて、そのために刹那を一生懸命に生きるということです。

「未来や過去のことを思い煩うよりも、今この時の一瞬一瞬を大切にして生きることこそが大事なことだ」といった釈迦の言葉の真意は、過去あなたが丁寧に生きたから今世があり、今世も今を大切に生きることで来世もあるのだよ、ということです。

これに比べて、快楽主義は、快楽というものを求めることが善なのだ、とする考え方です。ここには、過去・現在・未来といった転生という観念は含まれていません。そういった視点から見ても、刹那主義と快楽主義は根本的に大きく異なるものだということがわかります。

刹那主義者の特徴や生き方

via pixabay.com

では、刹那主義者は、どういう性格をしていてどういう生き方をしているのでしょうか。ここでは、刹那主義者には、その性格や生き方にどんな特徴があるのか、考察します。

今を大事にする

via pixabay.com

刹那主義者は、刹那刹那（一瞬一瞬）を大切に生きることをよしとしています。つまり、今、その時その時を大切に生きるという特徴をもっています。これは、ともすれば、今だけよければ過ぎ去ったこともこれから先のこともどうでもよいと思っているように見られがちです。

しかし、真なる刹那主義者というのはそういうものではありません。彼らにとって今を大切にするというのは、過ぎたことをくよくよと思い悩んだり、これから先、どうなるかもわからないことをああでもないこうでもない、と思い煩ったりする時間があるならば、今目の前にあること、今できることを一生懸命やる、という意味を表しています。

過去にとらわれない

via pixabay.com

刹那主義者にとって大切なことは、今その時であり、今目の前にあることであり、今取り組むことができることです。したがって、過ぎ去ったことをくよくよと考えることは好みません。つまり過去にとらわれないという特徴をもっています。

この考え方は、釈迦が刹那を説いたときに語った「過去がなんだったかを気にするよりも今を大切に生きることの方が大切ですよ」という言葉と合致しています。

過去にとらわれないというこの特徴は、失敗にこだわらない、いわば無責任な態度に見えてしまうことがあります。しかし本当のところはどうなのでしょう。失敗にこだわらないというのと、失敗から学ぼうとしないということは同じではありません。失敗から学ぶというのは、つまるところは、今という時をよりよく生きるためのものなのですから。

あまり悩まない

via pixabay.com

刹那主義者の人は、今その時を大切にして生きているので、過ぎたことやこれからのことをあれこれと思い悩むことをしません。また、今のことでも、悩んでいる時間があれば、できることをするというスタンスで生きています。それが悩みがないように見えてしまいます。

悩みがないというよりも、実際は、悩んでも仕方がないことに時間を割かないといった方がより適切な表現だと言えるでしょう。対人関係にしても、相手がいる問題に関しては、自分1人が悩んでも仕方がない、という割り切り方をします。どちらかというと、楽天的なものの考え方をするというのがこの刹那主義者の特徴です。

ポジティブで積極的

via pixabay.com

刹那主義者の人は、今というその時その時を大切に生きるために、上述のように、今1人でどうしようもないことをくよくよと悩んだりしません。その時間があれば、今やれることに全力投球します。つまり、マイナスな要因は切り捨てて、プラスになることを積極的に取り込みます。これは何事においてもポジティブだということです。

また、その時を大切にするためにできることには何でも積極的に取り組みます。今その時を素晴らしいものにするためには、どんなことにも積極的にチャレンジします。それによって、今という時が、その人にとってますます充実して魅力的なものになっていきます。

未来志向

via pixabay.com

刹那主義者の人は、今その時その時を大切に生きています。これは、その時その時、何もかも忘れて何かに没頭するということです。自分にとって大切なこと、必要なこと、好きなことなどに、ただひたすら取り組むということです。

人間1つのことに全神経を集中させて取り組むと、それに関連した知識が蓄積されたり技術が身についたりします。また、それに没頭していると、思考は、次はどうするか、次はどうなるかといった次の段階へ展開していきます。つまり、刹那主義者は未来志向でもあるということです。